城東電気軌道をもっと知るためのブックガイド

 

(1)城東電気軌道の概略について (2)紙媒体に掲載されたもので (3)ある程度まとまった文章

上記の3条件に当てはまる情報は、私が調べた限り2つしかありませんでした。

 

 

本誌でも紹介しましたが、日本の「鉄道趣味者」の草分けである宮松金次郎氏が模型鉄道社発行の雑誌『鐡道(第36号 昭和7年4月,第37号 昭和7年5月)』に寄稿した記事が、城東電気軌道について同時代に記されたおそらく唯一の、そしてこれまでのところ最も詳しい情報でしょう。2015年にネコパブリッシングから出版された「宮松金次郎・鉄道趣味社 写真集 東京市電・都電」に再録されています。

内容については、氏の関心領域である車両や運行形態を中心に、当時の様子が克明にレポートされています。特に車両については、本書の主役である豊富な写真によって十二分に解説が尽くされているので、「百年史」では全く触れませんでした。値は張りますが、王子電軌や西武電車も手厚くカバーしており、十二分に価値のある記録となっています。


もうひとつは、鉄道友の会会報誌「RAIL FAN」535号(1997年7月号)に掲載されている「城東・都電・夢語り~下町の買収電車~」という文章です。これは様々な鉄道誌に寄稿している中込浩二氏によるもので、城東電気軌道の成り立ちから廃線後の状況まで簡潔にまとまった記事です。

RAILFANのバックナンバーは入手困難で実物を入手することは叶わなかったのですが、かつて中込氏のwebサイト『馬橋電車営業所』に同記事が転載されていたことが分かりました。しかしこのサイトも「infoseek isweb」のサービス終了により2010年10月31日を以て消えてしまったようで、現在はwebアーカイブでしか見る事が出来ません。最近「城東電気軌道難民」が増えた背景には、こうしたwebサービス事情の変化もあるようです。

城東・都電・夢語り~墨東の買収電車~(Wayback Machine) 


閲覧が容易な文献としては、城東電気軌道が走った江東区と江戸川区の「区史」に区内の状況を中心に記述があります。これらを併読することで概略をつかむことができます。また江東区史(1997年版)は乗合自動車事業や江東地域で出願された城東電気軌道以外の軌道計画について、江戸川区史は旧江戸川線のトロリーバス転換について詳しく解説しているので、城東電気軌道研究においても必読書となるでしょう。

 

 

江東区史 中巻』p.388-401 江東区編 1997年発行

※江東区史は1957年と1997年の2回発行されており国会図書館デジタルコレクションにあるのは1957年版

 

 二 城東電車開通

  ・城東電車

  ・大正期以降の市電

  ・乗合自動車

 

 

江戸川区史 第3巻』p.269-268 江戸川区編 1976年発行

※江戸川区史は国会図書館内または図書館送信参加館内に限り国会図書館デジタルコレクションで閲覧可

 

 四 都電

  ・マッチ箱電車

  ・市電から都電へ

  ・撤去まで

 五 トロリーバス

  ・都電にかわる登場

  ・十六年間の寿命

 

 

その他に下記の書籍・雑誌に城東電気軌道の断片的な情報または時代背景について理解の一助となる情報があります。見出し的にamazonを利用して表示していますが、ほとんどが新品では手に入らない本(しかも高い)なので図書館で閲覧するか、どうしても欲しい方は古書販売サービスと価格を比較してから購入されるのがよいかと。

 

 

初代発起人総代本多貞次郎の"本業"となんる京成電鉄の社史です。本多について詳述している数少ない文献であるとともに、城東電気軌道についても「関連会社」と位置付けて紹介しています(p.308)。

図書館蔵書情報

鉄道ピクトリアルが定期的に発行している電鉄特集号の1997年版京成本です。鉄道史研究家の白土貞夫氏による「本多貞次郎と政界活動」が収録(p.124-129)。本多の他鉄道会社への経営参加について述べた貴重な論考です。

交通調整の実際

鈴木清秀

現在の都市鉄道勢力図を形作った「交通調整」を、当時鉄道省次官として取り仕切った鈴木清秀が概要・背景・経過の全てを語る解説本です。この本を抜きに昭和鉄道史は語れません。城東への言及もあります。図書館蔵書情報


1963年に発行された日本の私設鉄道史に関する古典的研究書です。第二部では電鉄の発祥から交通統制まで都市交通史を経営史の観点から包括的に分析しており、内側から書かれた「交通調整の実際」と共に外せない基本書です。

図書館蔵書情報

建築史家藤森照信氏の博士論文を刊行したもので、震災以前の「明治東京」を知る上の基本書です。東京の骨格がどのようにして作られ、また発展してきたのか、この本を通読するだけで一通りのことが分かるでしょう。

藤森氏は明治以降の時代に興味を示さないので、震災以降の都市計画を知るのであれば、震災復興事業研究で大きな業績を残した越沢明氏の著書がよいでしょう。東京の都市計画 (岩波新書)もおすすめです。


「鉄道未成線」本の第一人者である森口誠之氏による商業版私鉄本。失敗事例から大正・昭和初期の鉄道事業の"実態"が見えてきます。また当時の許認可制度、鉄道省文書についての解説も豊富で、入門編として最適の一書です。

東京東部地域そして城東電気軌道に大きな影響を与えた荒川放水路の建設。しかし、この一大事業についてまとまった資料は本書の外にはほとんどありません。小学校教諭だった絹田氏が自らの足で調べまとめた情報、そしてその過程で知った歴史の真実は必見です。

鉄道史に限ったことではありませんが、経営史を研究するにあたって人名は大きなカギになります。経営者や役人など重要人物を調べる際はこうした人名辞典が非常に役立ちます。

大丈夫。鉄道史学会の攻略本だよ!


「百年史」のテーマの中心にあるように、大正・昭和戦前期において鉄道事業と電気事業は切り離せない密接な関係にあります。電灯会社の勃興から電力統制に至るまでの経緯を知るには最適の一冊です。資料編も非常に充実しています。

図書館蔵書情報

 

近代日本の地域形成を歴史地理学のアプローチから論じた12編の論文集です。天野宏司氏の「第6章 高圧送電網の形成と空間編成」は利根発電による送電網ネットワーク形成をテーマにしており、執筆にあたり大きな示唆を頂きました。

茨城県の小規模電灯会社の歴史を、小型タービン水車の観点から解き明かすニッチすぎる研究書です。才賀系事業者、帝国電燈系事業者、そして利根発電が入り乱れる千葉・茨城電力史は「百年史」の考察を検証するにあたって非常に重要な観点となりました。


城東電気軌道の写真資料

 

城東電気軌道時代の写真は、冒頭で紹介した「宮松金次郎・鉄道趣味社 写真集 東京市電・都電」のほか、高松吉太郎の「東京の電車道(プレスアイゼンバーン)」にも紹介されています。直接確認していませんが江戸川区郷土資料室にも資料があるようです「解説シート 城東電車(PDF)」

 

都電時代(1960年代後半~1972年)の写真は、東京都交通局の公式資料としては「都営交通100周年 都電写真集」に若干掲載されているほか、下記のwebサイトで管理者様が撮影した当時の写真が公開されています。

 

ぽこぺん』さっしいさん

都電アルバム6「江東の都電は異次元空間」

都電アルバム7「逆光の境川に幻の臨時系統出現」

都電アルバム8「城東電車の夢の跡・小松川廃線」

都電アルバム31「江東橋から竪川橋へ」

都電アルバム32「竪川通から大島あたり」

都電アルバム33「砂町暮色」

 

なつかしの鉄道写真館』Glockさん

城東電車江戸川線とトロリーバス

城東電車小松川線の面影を都電25系統で追う

城東電車砂町洲崎線の面影を都電38系統で追う

 

二邑亭駄菓子のよろず話』二村高史さん

「下町の都電(1970年代前半)」